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大阪地方裁判所 昭和57年(タ)204号 判決 1983年6月27日

原告

山川一夫

右訴訟代理人

廣川浩二

土居幹夫

溝上哲也

原告

甲崎花子

右訴訟代理人

影田清晴

被告

山川月子

被告

山川和治

右被告ら訴訟代理人

森野實彦

主文

一  昭和四六年一〇月二八日大阪府守口市長に対する届出によりなされた亡山川和三(本籍<略>)及び被告山川月子と被告山川和治との間の養子縁組が無効であることを確認する。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文同旨

二  請求の趣旨に対する被告らの答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告らはいずれも亡山川和三(昭和四六年一一月二〇日死亡、以下和三という。)、被告山川月子(以下、被告月子という。)夫婦(大正一五年三月一一日婚姻の届出)間の子である。

2  昭和四六年一〇月二八日、大阪府守口市長に対し、和三及び被告月子と被告山川和治(以下、被告和治という。)との間の養子縁組(以下、本件養子縁組という。)の届出がなされた。

3  しかし、右養子縁組の届出は、和三の死期が近いことを予期した原告山川一夫及び同じく和三の子である山川和行が、被告和治ほか四名を和三の養子とすることによつて、形式上相続人の員数を水増しし相続税を節減することを企図して、和三及び被告月子に無断で行なつたもので、右届出当時、和三には被告和治と養子縁組をする意思がなかつた。

よつて、原告らは、和三の子として、被告月子及び山川和行と遺産分割の協議をするうえで必要があるので、請求の趣旨記載の判決を求める。

二  請求原因に対する被告らの認否  1 被告月子

請求原因事実は全部認める。

2 被告和治

請求原因1、2の事実は認める。同3の事実は知らない。

三  被告らの主張

1  原告らは、遺産分割協議の必要上本件を申立てたというが、和三の遺産に関しては、その相続人である原告ら、被告月子及び山川和行の間において、昭和四八年、遺産分割協議書が作成され、更に同協議書の存在を前提とし、これを了解して協議のうえ、昭和五一年一一月一八日、遺産分割協議に関する公正証書が作成され、相続人間に遺産分割の協議が有効に成立している。

2  また、仮に、本件養子縁組が無効であり、被告和治が相続人として遺産分割に与ることができないものであつたとしても、原告ら、被告月子及び山川和行は、いずれも本件養子縁組に瑕疵があることを知りながら、自ら当事者として被告和治とも遺産分割協議をなしたものであるから、被告和治が相続人として取得した遺産に関しても、これは、右原告ら相続人がそれぞれ自己の相続分の相当部分を被告和治に贈与したというべきで、前記遺産分割の協議は有効なものである。

3  更に、仮に原告らに相続回復請求権があるとしても、原告らは、遅くとも昭和五一年一一月一八日には、被告和治が和三の相続人でないこと並びに被告和治が昭和四八年作成、昭和五一年一一月一八日作成の各遺産分割協議書に基づき、同協議書記載の物件を取得し、原告らの相続権が侵害されたことを知つていたものであるところ、この時から既に五年が経過したので、右請求権は時効により消滅した。

よって、原告らが、和三の遺産につき、遣産分割の協議を求める余地はもはやないから、右協議をする前提として必要であるとして提起した本件訴はその利益を欠く。

第三  証拠<省略>

理由

一<証拠>によれば、請求原因事実をすべて認めることができ、これに反する証拠はない。

二ところで、被告らは本件訴はその利益を欠く旨主張するので検討するに、原告らがいずれも和三と被告月子の間の子であることは前認定のとおりであつて、原告らは、本件養子縁組の当事者たる和三らの一親等の直系血族であり、本件養子縁組が有効か無効かによつて相続、扶養その他の身分的権利義務に直接影響を受ける関係にあるから、本件養子縁組に関し身分関係を明らかにする利益を有するというべきである。

被告らは、和三の遺産については既に有効な分割の協議が成立し、又は原告らの相続回復請求権が時効消滅したため、原告らはもはや遺産分割の協議を求める余地がないので、本訴につき訴の利益がないと主張するのであるが、身分関係確定の必要は相続問題のみに関する訳でないうえ、右協議の余地があるかないかは、遺産分割の前提問題として本件とは別個に処理されればよい問題であるから、右訴の利益の有無を左右するものではない。

三よつて、原告らの本訴請求はいずれも理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(石田眞 松本哲泓 村田鋭治)

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